サングリアと酒税法
目次
サングリアって酒税法違反になるの?
また酒税法の話です。
最近人気のサングリア。
飲食店でもよく見かけますし、大手メーカーも売ってますよね。
サングリア(西: sangría)は、スペインやポルトガルでよく飲まれているフレーバードワインの一種。
赤ワインに、一口大またはスライスした果物と甘味料を入れ、風味付けとしてブランデーあるいはスパイス(シナモンなど)を少量加え、一晩寝かす。「サングリア」 『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)。2016年12月24日 (土) 19時(日本時間)現在での最新版を取得。
飲みやすいですし、手軽に作れるので人気なのもよくわかります。ただ、「自家製」サングリアは酒税法違反の恐れがあるんじゃないかと思うんです。
飲食店で作って出すサングリア
家で自分用に作るサングリア
では細かく見ていきましょう。
製造免許が必要か?
お酒を作るには免許が必要です。これは税収確保と品質維持の目的があると思います。
酒税法7①抜粋
酒類を製造しようとする者は、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許を受けなければならない。
では、サングリアを作るのは「酒類を製造」したことになるのか?
なるんです。
酒税法43①抜粋
酒類に水以外の物品を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす。
いわゆる「みなし製造」と呼ばれるものです。
「じゃあ免許いるじゃん!サングリア、無免許製造じゃん!」
ちょっと待って下さい。この規定には適用除外になるものがあります。
カクテルは大丈夫
ちょっと話わ変わりますが、バーテンダーが作るカクテル。これは「酒類を製造」することになるんでしょうか?
原則的には酒類を製造したものとみなされます。でも大丈夫。適用除外の条文が酒税法にあります。
酒税法43⑩抜粋
消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。
酒税法施行令50⑬抜粋
政令で定めるときは、酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者がその営業場において消費者の求めに応じ、又は酒類の消費者が自ら消費するため、当該混和をするときとする。
お客さんの注文に応じて混ぜるときは製造とみなされません。また、自分で飲むために家でカクテルを作ることもOKです。これを「消費の直前に混和する場合の適用除外」といいます。
自家製梅酒も大丈夫
自家製梅酒って昔から作られていますよね。これも酒税法に適用除外の条文があります。
酒税法43条⑪抜粋
政令で定めるところにより、酒類の消費者が自ら消費するため酒類と他の物品(酒類を除く。)との混和をする場合については、適用しない。
酒税法施行令50⑭抜粋
一 当該混和前の酒類は、アルコール分が二十度以上のものであること。
二 酒類と混和をする物品は、糖類、梅その他財務省令で定めるものであること。
三 混和後新たにアルコール分が一度以上の発酵がないものであること。
梅酒の材料は通常、梅、焼酎(いわゆるホワイトリカー)、氷砂糖ですから大丈夫ですね。ただし、「消費者が自ら消費する」場合のみ適用されます。
酒税法43条⑫抜粋
販売してはならない。
売っちゃいけないことになっていますが、今は特例措置があります。
租税特別措置法87の8①
酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者がその営業場において飲用に供するため当該営業場において蒸留酒類と他の物品(酒類を除く。)との混和をする場合については、適用しない。
「自ら消費する」場合との違いは焼酎などの蒸留酒限定というところです。そうであればお店で飲んでもらうのは大丈夫です。昔はダメだったようですね。
租税特別措置法87の8③
当該混和をした営業場において飲用に供する場合を除き、譲り渡してはならない。
お土産用は今でもダメです。
結局サングリアはどうなんだ?
飲食店で作って出すもの
まず、カクテルと同様に取り扱えないか考えてみます。上のウィキペディアの作り方によると「一晩寝かす」とありますので、「消費の直前」とは言えません。この規定による適用除外は難しそうです。
次に梅酒と同様に取り扱えないか。ワインは酒税法上「果実酒」であって、「蒸留酒」ではないので、ダメですね。
となると、飲食店で作って出すのはないかな、と。直前にワインとジュースを混ぜて「サングリア風」のカクテルを作るしかないのかなぁ。
家で自分用に作るもの
カクテルと同様に扱えないのは飲食店の場合と同じです。
梅酒と同様に扱えないでしょうか。上で書いたとおり、「自ら消費する」場合は「蒸留酒」限定でないので、「果実酒」であるワインでもOKです。しかし、もうひとつハードルがありました。
「アルコール分が二十度以上のものであること」
アルコール分20度以上のワインならいいんじゃないの?
酒税法3条十三抜粋
果実酒 次に掲げる酒類でアルコール分が二十度未満のものをいう。
酒税法上「果実酒」でないワインなんてないですよね。無理やりアルコール分20度にしちゃえば作れますが、発酵し過ぎでおいしくないかもしれません。しかも、酒税法上「甘味果実酒」となり、例えばアルコール分が22度になると税額が1リットル当たり220円で現在のビール同じになります。ちなみに果実酒なら80円です。
結論
結論としては、お店でも家でも「自家製」サングリアは飲めないということです。サングリアはメーカーしか作れない。メーカーは製造免許を持ってますからもちろんOKです。う~ん、、、困った結論になりました。
もちろん、サングリアを作ることが「悪しきこと」というわけではありませんが、現行の酒税法では違反となる、ということです。しかしネットを見れば、自家製サングリアのレシピがたくさん出てきます。実際、皆さん作ってるんですよね?
条文を作ったときには想定していなかったということでしょう。それは無理もないと思います。
先日、税制改正大綱のビール税制の改正について書きましたが、サングリアも野放しにするのではなく、手を入れるべきなんでしょうね。サングリアって酒税法上「リキュール」かつアルコール分も低いので、税額は「果実酒」と変わらないと思います。税負担の均衡を失することも税収入の減少をきたすこともないので、みなし製造の適用除外にしても良いんじゃないでしょうか。
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